ソーシャルレンディングにおける分散投資の効果 その2

2.リターンがプラスになる確率(元本割れ回避率)

前回までは、分散投資をすることでどの程度リスクを低減できるかお話しました。

今回はリターンがプラスになる確率についてです。

分散投資によってリスクをいくら低減できても、

結局のところリターンがプラスにならなければ

(投じた金額以上のリターンが無ければ)

投資は成功したといえないと思います。

 

というわけで、リターンがプラスになる確率を求めていきます。

考え方はシンプルで、損益がプラスになる場合の確率の総和を求めるだけです。

例えば次の通り

【例】

  • 期待利回り8%
  • 案件デフォ率1%
  • デフォルト時元金回収率50%
  • ※デフォルトが起こった場合に元金の50%が戻ってくるとします
  • 運用資金10万円で1万円ずつ10件に投資
 
成功 失敗 損益(万円) 確率(%)
10 0 0.8 90.4
9 1 0.22 9.1
8 2 -0.36 0.4
7 3 -0.94 0.01

損益がプラスになるのは上2行の場合ですから、

この確率を足して90.4+9.1=99.5%が求める確率になります。

 

ここで、実際にソーシャルレンディングに投資している方はわかると思いますが、

投資する案件ごとに期待利率、デフォルト率(事前にわかるものではないですが)は

違いますし、支払いが滞ったとしてどの程度返ってくるかもケースによって様々です。

 

今回はハイリスク、ミドルリスク、ローリスクの3パターンについてリターンがプラスになる確率を求めます。

設定は次の通り。

【設定】 
  デフォルト率(%) 利回り(%)
ハイリスク 2 10
ミドルリスク 1 5
ローリスク 0.5 2.5

※いずれもデフォルト時は全額毀損とします。

 

次のグラフをご覧ください。

f:id:unipontan:20190220010136p:plain

横軸は分散数を示していて、縦軸は確率です。

グラフの通り、ハイリスク案件は分散数12で

リターンプラス率が跳ね上がっていることがわかりますが、

ミドル、ローは確率が減少していく一方です。


・・・?

分散投資した方がリターンがプラスになる確率は上がるのではなかったの?

当然そうです。分散数をさらに増やしていけば確率の跳ね上がる分散数があります。

なぜこうなるのでしょう?

 

冷静に考えれば当然ですが、分散投資は分散するだけ投資する件数が増えます。

当然、デフォルトに遭う確率も増えていくわけです。
ですので、この確率の跳ね上がるポイントこそが初めて分散の効果が出るポイント

と言い換えることができます。

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2019/07追記:

クラウドクレジット様のブログにおいて分散投資のマジックナンバーは「30」

という記事がありました。この記事に掲載されているグラフのギザギザにもあるように分散数を増やしていくとリターンプラス率は跳ね上がっては 下がりを繰り返しほぼ一定の値に収束していきます。クラウドクレジットさんでは分散による資産毀損率低減効果が徐々に飽和する点として分散数30を勧めているようです。

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興味深い点は、中途半端な分散数では

却ってデフォルトに遭う確率を高めるだけの危険な行為というところですね。

 

当然デフォルト率、利回り率が変われば確率の跳ね上がるポイントも変わります。

まぁ、100件や200件と分散している人から見ればそこまで気にすることではない

かもしれませんが、私のように運用資金100万円程度で1事業者につき7~8件という

ライトな方にとっては分散数がキーポイントになるでしょう。

 

分散させてデフォルトに遭う確率を下げようとしていた行為が、

逆効果だったということにならないよう

是非とも知っておいてほしい知識だと思います。

 

さてさて、今回はソーシャルレンディングにおける

リターンがプラスになる確率についてお話してきましたが、

一つ忘れている要素があります。

 

それは・・・事業者自体がデフォルトする確率です。

むしろこちらの方が注意すべき点であり、

先人の方々は事業者選びが大切だと口酸っぱく言っているのかもしれません。

 

次回は事業者のデフォルト率も加味した場合についてお話しします。